会社案内

  1. HOME
  2. 会社案内
  3. トップインタビュー

トップインタビュー

超精密金型で
モノづくり産業を支える

株式会社 吉田鋳造研究所
代表取締役社長 吉田 澄生

金型の企画・製作を手がけておられますが、1980年の創業時から金型が主たる製品だったのですか。

当初は自動車の水圧検査で使用する冶具を扱っていました。
工業製品 の技術者だった創業者の吉田肇(現会長)が設計を担当し、協力メーカーの工場に委託して、完成品を販売するという事業形態でした。
転機は83年、トヨタ自動車に部品を直接、納入している一次サプライヤーの共立工業(愛知県)を通じ、エンジン関連部品の鍛造系金型の提供を始めたことです。
鋳造は金属を 溶かして金型に流し込む製造法で、鍛造は金属を叩いて圧縮し、強度を高めるもので、当社が得意とする分野です。
現在、当社の製品が使われているのは自動車関連向けが売り上げの約95%を占めています。

「短納期」「低コスト」「高品質」をモットーに掲げていられます。
これらの課題をいかに実現してこられたのですか。

本来なら、腕のいい職人を多く抱 えたいところですが、仕事の標準化、技術の継承を考えると、完全に機械で対応することは難しいが、人の関与をなるべく少なくするのがベストだと判断しています。
機械を使えば複雑な形状を正確かつ短時間で加工できるので、超精密な金型では磨耗を少なくし、金型の長寿命化、お客様のコスト削減につながります。
製品加工に必要な高機能、最新鋭の設備を積極的に導入することは、お客さまの要求に応えることになると考えています。
さらに品質の向上に、より力を注 ぐことができますし、社員が技術の習得に時間を割くようになるなど、新たな取り組みによって金型の寿命を6倍に延ばしたケースもあります。
保有設備は「マシニング」「放電加工機」「ワイヤーカット」「研削盤」など79台に達し、当社の事業規模としては、かなり充実していると自負しています。
毎年、設備への投資を続け、2018年3月には7000万円の社債を発行しました。

他社では難しい、非常に精密なモノづくりを得意とされていますね。

「出来ないと言わない」を社訓の一つにしてきました。取引先からは高度な加工精度を求められており、設計図との誤差は±5マイクロメートルを目標にしていましたが、すでに達成しました。
現在は±3マイクロメートルの精度を目標にしています。
自動車にとって重要な部品ほど、高い精度が要求されます。守秘義務があるので詳しくはお話しできませんが、とくに近年、環境対応が求められる傾向が強く、重要保安部品へ の要求はシビアになっていますね。

経営環境の変化と、それに対する施策があれば教えてください。

一般に、どの自動車メーカーも効率的な生産を志向するなか、部品の共通化が進んでいます。
これにともない、全型の需要は徐々に減少して いるのが現状です。最近、注目を集めている電気自動車(EV)と燃料電池車(FCV)は、エンジン自体がなく、これも金型への需要減の要因になります。
タイヤで動く以上、動力を伝達するための歯車をはじめ、いわゆる足まわり関連部品は今後も必要とされるので、この分野で精度の高いモノづくりに力を入れ、他社との差異化を図っていく方針です。

高い技術力は、ほかの産業にも応用可能ではないでしょうか。

自動車以外の領域での可能性を常に探っています。これまで人工衛星の重要部品や、医療関係では人工骨などに利用された実績があります。
当社は、ナノ繊維製造法の特許を持つイースピネックスという関連会社を擁し、ナノバイオテクノロジーを応用した製品の研究開発も行っています。
独自の技術を軸にした事業を展開していくため、幅広い視点で新たな方向性を探る毎日です。

チャレンジ精神がビジネスの原動力と言えそうですね。

私自身、技術畑出身ではなく、大学は文系学部で、卒業後は薬品商社で営業マンとして働いていました。
モノづくりの技術や知識は、上司・先輩・客先・協力メーカーからの指導、勉強で習得しました。やる気さ えあれば、できないことはないというのが信条です。
わが社の社訓は、「感謝の気持ちを忘れない」「熱意をもって事にあたる」「変化を嫌わない」「失敗を恐れない」「出来ないと言わない」の5つ。
今後も、これらの社訓を地道に実践し、社会に貢献できるよう努力を続けたいと考えています。

「最新鋭の機械を使いこなすのは、失敗を恐れない社員たちです」吉田澄生
三菱UFJビジネススクエアSQUET(スケット)2019年4月号掲載